東京の焼肉は楽しみ方がいくとおりもあります。というのは、近年営業形態を変えた店が多いからです。それまでの営業方法として多かったのは、夜の部だけ営業するというスタイル。この営業方法をとっている店が多く、私たちもそれを当たり前のことだと思っていました。東京で焼肉を食べたいと思ったのであれば、日が沈んでから出かけるのが一般的でした。もちろん、自宅で食べるのであれば、スーパーや精肉店で食べたい肉を準備し、好きな時間に楽しめばいいのですが、片付けが面倒であったり、食べたい肉が売っていなかったりするため、やはりお店で楽しむ方が多いです。
若いときであれば夜に焼肉を食べることに抵抗はありませんが、ある程度の年齢になってくると、食べ過ぎてしまうと胃腸の調子が悪くなったり、次の日に食欲が無くなったりすることもあります。そのため、次の日を考えると思い切って食べることができませんし、不完全燃焼気味の食べ方となっていたのはいうまでもないでしょう。若いときのように、何も気にせず思い切り食べるのは躊躇するようになってしまいます。
いつまでも自分は若いと思っていた人が、焼肉を食べた次の日の状態で年齢を思い知らされる……という話は、よくある話。これまでのように東京の焼肉を外で思い切り食べることはできないのかな、と諦めに似た思いを抱いた人も多いことでしょう。
しかし、この営業形態が変わるきっかけが訪れます。それは世界的な感染症の蔓延です。日本でも営業自粛などが行われるようになり、夜の営業が短くなった時期がありました。夜のみ営業をしていた店にとっては死活問題であり、店そのものの存続も危ぶまれたところもあったようです。そのため、これらの店の苦肉の策として昼間の営業をしたり、テイクアウトの導入をしたりしたことはいうまでもありません。仕入れがある程度固定化している場合、生産者との契約もありますし、肉や野菜を仕入れなければならない店も多かったとのこと。さらに、店に勤める従業員を抱えている手前、この従業員達が路頭に迷うことを防がなければならなかったからです。
これまで夜のイメージが付いていた東京の焼肉でしたが、昼の焼肉やテイクアウトは想像以上に多くのお客様に利用されました。東京で夜の焼肉を食べることは、どうしても高いイメージがあるため、ハードルが高いと思っていた層が利用するようになったからです。それまで、夜に来店していたお客様は当然、そのおいしさを知っているので、昼の営業やテイクアウトでも利用してくれましたし、価格帯が少し下がることによって、利用回数も増えたと聞きます。
こうやって、東京の焼肉は夜の営業が危ぶまれてしまっても、おいしいものを提供していることは変わらないので、お客様を逃すことにはなりませんでした。ピンチをチャンスに変えるではありませんが、実際にはこれまで以上に幅広いお客様に楽しんでもらうことになったようです。これは焼肉に限らず、本当においしいものを提供している店に共通していることでした。利用する側からすると、夜に外食をする機会が減ったことにより、本当に食べたいものを選択することに繋がったのかもしれません。いつの時代も本物は多くの人の支持により、どのような逆境も乗り越えることができることを証明した形ともいえるでしょう。
飲食店にはかなりの種類があります。ラーメンや丼、ハンバーガー、寿司、天ぷらなどありますが、その中でも店舗数が多いのは焼肉です。その数は年々増えており、チェーン店から個人経営をされている店までかなりの数にのぼります。どのような客層をメインにしているかも違えば、店構えもかなり違っているのが、焼肉店といえます。これは、他の飲食店には見られない傾向です。私たちは自分の食べたいときにランチやテイクアウトでも焼肉を楽しめ、シチュエーションに応じて店選びもできます。